『月光舎』



目黒区目黒本町の住宅地で、つくり手の想いが伝わるクラフトや古道具、雑貨など、暮らしに寄り添う素朴な商品を扱うちいさな雑貨店。

人の手の温もりのあるcraftと、時を経てなお暮らしに寄り添うvintageを、たくさんの人にお届けしたい。
そして、人から人へと巡る『物創り』が繋ぐ、本当の意味でのサイクルをつくってはゆけないだろうか。

そんな思いで作ったお店です。

2012年4月28日にオープンし、もうすぐ丸9年になる月光舎。
お話し好きで親しみやすい印象の店長の森脇さんに、いろいろお話を伺ってきました。 


 

―― お店を始める前は、どんなことをされていたんですか? 

「もともとは雑貨ではなく、ファッションをやっていたんです。
服をきっかけにNY・パリ・ミラノあたりに興味を持って、海外のモードを勉強したいなぁと思っていました。 

 20歳の時に「成人式に振袖じゃなくていいから、そのお金で海外行かせて」と親に交渉して、英語もろくに出来ないのにパリとロンドンに一週間ずつ、初めての海外一人旅に行かせてもらいました。

そこで目覚めたましたね!
一週間まるまる使って、気になるお店全部回りました。

最初は服から入ったんですけど、市場とか蚤の市とかいろいろ見て回って、アンティークにどんどん興味が沸いてきました。
日本は新しい物を積極的に取り入れる傾向があるけど、向こうは古い物に重きを置きつつ、さりげなくスパイスを取り入れるようなスタイルで、それが本当にかっこよかったんです。 

 地元の北海道から横浜に出てきて、親戚のアパートで暮らし始めてからは、インテリアや雑貨、スタイリングの世界に興味が移っていきました。

インテリアスタイリストを目指しながら、バイトを掛け持ちして、貯めたお金で海外旅行に行く、という生活をしていました。 年に1回、1~2週間程度で、長い時は1ヵ月くらい滞在する時もありましたよ。
フランクフルトに親戚がいるので、そこを拠点にして、ベルギー・オランダ・フランスとか、ヨーロッパを中心に旅行していましたね。 

 その後、日吉と綱島の間くらいにある、古い格安の一軒屋で暮らし始めたんですが、この頃は自分の好きなようにアンティークの物をたくさん集めていました。

家の中がどんどん超こだわりの世界観に作り込まれていって、写真撮るために置いてるみたいな、ショールーム状態でした。 誰か人が来るわけでもなかったんですけど(笑)ね。 

 そんな生活してるうちに、今のこの場所を見つけて移ってきました。」

 


 

―― この敷地を初めて見た時、どのように感じましたか?

 「以前ここには印刷屋さんがあったんですが、オーナーさんが引退されて、若い男性デザイナーの卵7、8人が事務所として使っていました。
彼ら、面白くしたいからと言って、天井抜いたり床抜いたりと好き勝手やってたらしいんです!
すごいですよね。

 その好き勝手やった二階の部屋がすごくかっこよくて、初めて見た時「ここで何か出来るな!」と強く思いました。
…結局、二階は住居になってしまいましたけどね。
やっぱりお店をやるなら、路面じゃないとお客さんが入りにくいですから。 

この空間(店内)はもともと、ただの駐車場だったんです。」

 




...駐車場?

―― 元駐車場だったとは、とても思えないのですが…。 

「このお店の床は、実は駐車場時代のものをそのまま使っています。
壁は断熱材とベニヤを貼って、色を塗って、自分達で建てました。
工事が入ったのは電気とエアコンだけで、それ以外の柱とか棚とか、ここ(レンガの床)も、全部自分たちでやってしまいました! 

 お店の什器も、前の家で集めていた家具を使っているので、お店をスタートするにあたっての投資は仕入れの雑貨だけで済みましたね。」


写真左下の什器は、もともとフランスのベビーベッドなんだとか。

 


 

―― お店の雰囲気は、オープンした頃から変わりましたか? 

「オープン当時は、ものすごく格好つけていました。
ショールームみたいに間引きして、商品を余白の中にポンと置くみたいな…「魅せる」ことを優先していましたね。
品数は今の10分の1くらいしか無くて、それも半分はアンティークで。とにかく自分の世界観を大事にしていました。

でも、そういうショップは住宅街の中だとドアを開けるハードルが高くて、地元の人は入り辛かったみたいで。
もっと暮らしに根付いた、庶民的で入りやすいお店のほうが、お客さんに受け入れられやすいということに気付いたんです。 

そこからは、蚤の市のようなガチャガチャ感をイメージして、たくさんの物の中からお気に入りを探し出すような、わくわくするお店にシフトすることにしました。

 商品数を増やしたり、コーヒーや音楽といった色々なイベントを企画したり、友達の家に行く時の手土産になるようなプチギフトを置いたり…。 地域の方に「入りやすいお店なんだ」と思ってもらえるように、1年目はとにかく試行錯誤を繰り返しました。」

 


 

―― 「格好つけ時代」もぜひ見てみたいです(笑)。その後も、お店は変化し続けたんですか? 

「毎年4月のアニバーサリーの月には必ずイベントをやるんですが、中でも物産展が人気でした。
色々な地方の物産展をやって、特別なお祭り感を出してたんですよ。
あんなにこだわってガチガチに世界観を築き上げていた場所で、今では物産展をやっているなんて…。
なんていうか、良い意味で「もうなんでもありでいいか~」と思えるようになりました(笑)。 

 ちょうど同じくらいのタイミングで、息子が生まれたのも大きかったです。
子供って、とにかくグチャグチャにするじゃないですか。
家の中は大変なことになりましたが、そのお陰で、世界観が崩れることに慣れていたんですね。
お店のほうも次第にガチャガチャになったけど、それが自然なことなんだと受け入れられるようになっていました。 

いろんなものが入ってきて、いろんなものが混ざり合っていくのが「生活」であり「暮らし」なんだと、ようやく思えるようになりました。

 日常で使える、日常で食べられる、日常で贈り物できる、そういった親しみをもってもらえるお店になるように意識していく内に、 お客さんも入りやすいなと思ってくれたみたいで、お喋りするだけのつもりで気軽に立ち寄ったついでにちょっと買っていく、ということが増えていきました。
この方向性にして良かったなと、心から感じましたね。

 保育園を通して近所に住むママ友と交流が持てるようになってから、これで本当にお店と生活が根付いたなと、9年かかってよくやく実感できました。」



地域の人たちが足しげく通う、憩いの場でもある店内。

 


 

―― 手書きのマップを作った経緯を教えてください。 


細かく描きこまれた、手書きのイラスト入りマップ

「お店を知ってもらう活動の一つではあるんですけど、道を聞かれることが多いんです。
一本道を間違えると、全然違う方面に行っちゃったりして…私たちも引っ越してきたばかりの頃はすごく迷いました。 だから自分達用に簡単な地図を作ったんですが、ウチのためだけの地図って、なんだか勿体なくて…。

 駅からここに来るまでに色々寄り道してもらおうと思って、道沿いのお店をどんどん入れていくうちに、最終的にもう全部!みたいになっちゃいました。

目黒本町を中心にした地図は今までになかったので、おもしろいかなぁと思って。
目黒本町…昔の地名だと月光町っていうんですけど、そこをメインにした地図を作ってみようと考えました。 

 『月光舎』は、その月光町の名前を残したくてつけたんですよ。
名前の通り、月がすごくきれいに見えるんです。
昔戦争でこの地域が一面焼け野原になって、本当に何もなくなったところに月がぽつんと浮かんでいたところから付けられたそうです。
区画の統合とかでどんどん目黒本町に名前を変えているんですが、消えていく月光の名前を守っていきたいです。」

 


 

―― だからロゴにも月が使われているんですね。 


「そうですね。
店名とロゴが両方あると煩くなってしまうので、店名にロゴを入れ込んでしまいました。
家の二階が三角屋根で梁が出ていて山小屋感があるので、月が見える山小屋、山と森にいる動物…と連想して、最終的にシカと三日月をモチーフに選びました。

 


 

―― 一緒にお店を作り上げてきた旦那さんのことを教えてください。 

「私があんまり考えずに行動する、石橋は叩かないタイプなんでけど、旦那は真逆で、石橋叩きまくって渡らないタイプ。
でも、そのお陰ですごくバランスはとれていると思います。

私が暴走しそうになると、それを見計らって釘を刺してくれるので、踏みとどまって慎重に考えられるようになりました。
逆に向こうがダメな時は、私が背中を押してあげています。 

 互いが互いに無い物を持っているので、足りない部分を補えるようになったので、失敗がなくなりましたね。」

 


 

―― 喧嘩はしないんですか? 

「年齢差が10あるということもありますが、怒りの沸点が違うんですよね。
片方が怒っていても、片方が冷静でいられるから喧嘩にはなりません。 

 ただ、衝突はしない代わりに、ものすごく話し合いますね。
一つの議題にお互いの意見を全部出して、中間をとるためにとことんまで議論します。」

 


 

―― では、最愛の息子さんのことも教えてください。 

「息子は…今一番の悩みですね(笑)。

未知の生物、制御不能、今までの人生の中で一番の謎かもしれません。お店のことよりも、息子に困惑することのほうが多いです。 自分とは全く違う考えを持ってるし、パワーも行動力もあるし、エネルギッシュすぎてタジタジ…(笑)。 

 でも、その天真爛漫さ・破天荒さを個性と捉えて楽しめるように育てたいと思っています。
そして、息子が自分自身を「僕って変わってるのかな」と思わせないように育てたいです。 

 息子が生まれてから、以前よりお店に手が回らなくなりました。
だからこそ、お店はゆっくり運転で、息子の成長に合わせてアクセルを踏めばいいかな、と考えられるようになりました。 

 以前は何かと張り切りすぎていたけれど、それが上手く抜けて、ご飯を作ったり家事をやったり友達と話しをしながら、お店を「生活の一部」として気軽にやれるようになったのは、息子のおかげかもしれません。」

 


 

―― たくさんの商品を扱う中で見えてくる、世の中の変化は? 

「コロナの影響でおうちで過ごす時間が増えたこともあって、食器が出るようになりました。

 欝々した気持ちを払うためにお金を使おう!家の中で毎日使える食器を新調しよう!という方が多いみたいです。
一枚買いに来たつもりがあれもこれも気になりだして、やっぱり家族の分も買おう、このお皿を中心にして他の食器も買おうみたいになって、一人で3、4枚買っていただけるおかげで、有難いことにこのコロナ過でも、うちは大きな打撃は受けなかったです。」


救世主になった食器たち。

 


 

―― 振り返ってみて、これまでの人生を総括すると? 

「ゆっくり階段を上り続けている感じ、でしょうか。

 日々記憶は上書きされていているので、覚えていないだけかもしれませんが、私の人生に大きな波はなかったように思います。

 ごく小さい波はたくさんあるんですけどね。
例えば本を読んでいて「あ、ここに行きたい」と思ったら、衝動に任せてそのまま行ってしまいます。
その本に出会えたことが、私にとっては一つの波ですから。
そういう波には、フットワーク軽く乗ってしまいます。

 行きたければ行く、作りたければ作る、見たいと思ったら見に行く。好奇心を刺激されれば、わくわく感だけで動きますね。
楽しいことや好きなことに囲まれた、幸せな人生だと思います。 

 ただ、そう思えるのは、まだ大きな不幸を経験していないからかもしれません。
平和ボケしているんですよね。
常に警戒心を怠らない人に比べて、私みたいなタイプは大きな壁にぶつかった時、立ち直りに時間がかかりそうな気がしています。

 でも、起きるかわからない不幸を考えるよりも、「今が幸せ」なことが私にとっては重要です。
今までもこれからも、『3日ぐらい先のことは考えているけど、今が幸せと感じられる自分』を大切にしていきたいですね。」

 


 

―― 最後に、これからのビジョンは何か思い描いていますか? 

「まったくもって先のことは考えていないです。 

移転を考えていた時期もあって、その頃は先のビジョンをすごく考えていたんですけど、その話が流れてからは特に急ぐ必要もないし、自分の生活のリズムに合わせていこう 9年かけてようやく地元の人たちにも認知されうようになって、大きなアクションを起こさなくてもお店に来てもらえるようになったので、直近で大きく動くつもりはありません。 

タイミングが来たらそれをきっかけに大きく発展したり、完全に移転することもあるかもしれませんが、今はゆるく流れに身を任せつつやっていきたいと思っています。 

ただ、人でも物でも、「出会い」は大事にしていきたいですね。」


―― ありがとうございました。 



ワクワクがあちこちに散りばめられた店内。
気分は宝探し。





 

店舗情報 

craft & vintage GEKKOSHA (月光舎)
〒152-0002 目黒本町6丁目13-16
TEL:03-6876-7311

【アクセス】
電車:東急目黒線武蔵小山駅(西口)/西小山駅(改札口)から共に徒歩15分ほど。
バス:東急バス渋71系統。東急目黒線洗足駅(渋谷駅東口行)5分/渋谷駅東口(洗足駅行)30分
共に月光原小学校前バス停にて下車。徒歩3分。

営業時間 12:00〜18:00
定休日 火曜日、水曜日